隠密 味見方同心(一) くじらの姿焼き騒動
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- ¥680
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発行者による作品情報
南町奉行所きっての腕利きと噂される臨時回り同心・月浦波之進に特命が下った。「江戸の食いもの屋の動向を探れ」と。調べに必要な飲み食いの掛かりは、すべて請求できるという。十手を羽織の下に隠し、隠密捜査を始める波之進。―その折、金貸しが殺された。生前にその男が告げたある料理。波之進は、その料理を手がかりに、下手人を捜す。謎をはらんだ珍妙な食物が次々登場。軽妙洒脱、仰天推理の傑作時代小説開幕!
APPLE BOOKSのレビュー
江戸時代の食に特化した痛快娯楽時代小説。文武に秀でて美男子という南町奉行所きっての同心が「江戸の食いもの屋の動向を探る」という特命同心に任命される。もともと食べるのが好きな主人公は、凡庸ながら気の優しい弟の協力を得ながら、食に絡んだ数々の怪事件に挑んでいく。徳川将軍家のお膝元である江戸は、平和な時代に多くの物資が流入し、食文化も大きく発展した。寿司や天ぷら、うなぎにそばといった現代でも楽しまれる料理は、江戸文化の粋といえるだろう。しかし、各話のタイトルは「禿げそば」「うなぎのとぐろ焼き」「くじらの姿焼き」「鍋焼き寿司」と、見たことも聞いたこともないようなものばかり。そんな奇妙な食べ物の正体を追いながら、事件の真相に迫っていく。数々の人気時代小説を生み出す著者による、テンポの良い筆致が軽妙。豊富な江戸文化への造詣に裏打ちされた料理の描写がおいしそうだが、意表をついたどんでん返しも待っており、すぐに続きが読みたくなる。全9作とシリーズ化され、さらに続編も生まれた人気シリーズの序章となる作品。