神話の果て 【新装版】
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発行者による作品情報
アメリカの巨大鉱業会社から、ペルーの山岳ゲリラの首領抹殺の仕事を依頼された破壊工作員・志度正平(しどしょうへい)は、首都リマに到着、2人のインディオと共にゲリラの進発地チャカラコ渓谷に向かう。4千メートルを超すアンデスの山々を越え、ゲリラの基地に潜入した志度を待つ過酷な運命とは!? 南米3部作第2弾! (講談社文庫)
APPLE BOOKSのレビュー
1980年代の冒険小説ブームをけん引した船戸与一が、南米を舞台に日本人アウトローの死闘を描いた『山猫の夏』から始まる南米3部作の第2作。ウラン鉱床の独占を狙うアメリカの巨大鉱業会社AAMは、莫大な埋蔵量が眠るペルー山岳地帯で勢いを増すゲリラ組織の首領抹殺を画策。かつて文化人類学の学究だった破壊工作員、志度正平は依頼を受け、自分と酷似した日系人活動家になりすまし、案内役のインディオと共にゲリラ基地への潜入を図るが、そこには思いもかけぬ事実が待っていた…。『ゴルゴ13』の原作も手掛けた作者が描く主人公の志度は、たびたび襲いかかる危機のいかなる状況にも冷静に対処するプロ中のプロ。クメール・ルージュの虐殺を生き延びた不気味なカンボジア人の殺し屋や、学者時代の志度を知るCIAの工作員がそれを追う展開は、読者の興奮をかき立てる。志度と暮らした白人娼婦をはじめ、その他30名以上に及ぶ登場人物を的確に書き分け、血肉を与える筆力もすさまじい。おびただしい量の血が流れる小説だが、ゲリラ神話が現実と化すインディオの蜂起にも心が動く。まさに巻を措く能わずの傑作だ。