三四郎
発行者による作品情報
『それから』『門』へと続く、夏目漱石の前期三部作の序曲とも言える作品で、全13章からなる。熊本の高等学校を卒業した小川三四郎が東京の大学に入学し、生き馬の目を抜くような都会の荒波に打たれつつ、様々な人との交流とそこからの新たな体験を通して成長していく姿が描かれる。自由奔放な都会の女性・里見美禰子に翻弄される三四郎の姿に、誰もが一度は経験する恋愛への不安や戸惑いが凝縮されている。登場人物には実際のモデルが存在している。三四郎は漱石の弟子である小宮豊隆であり、美禰子はやはり漱石の弟子の森田草平と心中未遂事件を起こした婦人運動家・平塚雷鳥であり、三四郎の先輩である野々宮は寺田寅彦がモデルとされている。1908(明治41)年、『朝日新聞』に連載され、翌年に春陽堂から刊行された。
APPLE BOOKSのレビュー
夏目漱石による、『それから』『門』へと続く前期3部作の一つであり、“教養小説(ビルドゥングス・ロマン)”の典型と評される名作。九州の田舎から上京してきた小川三四郎は、女性経験のない純朴な青年。旅の途上で知り合ったとある夫人と同じ宿で一夜を過ごすも、「貴方はよっぽど度胸のない方ですね」とからかわれる始末だ。そんな三四郎が里見美禰子という令嬢と出会い、ほのかな恋心を抱く。イノセントな青年が、都会での出会いや経験を通じて自分を見つめ直す普遍的な成長物語であり、明治時代の知識人たちの姿や若者たちの恋や苦悩が、平易かつユーモアに富んだ文体により鮮やかに描かれる。三四郎や美禰子が抱えていた自己の存在の不確定さや、異なる世界の間で揺れる“stray sheep(迷える羊)”の姿も、現代の若者に共感をもって受け入れられるだろう。同時に、漱石のシニカルな視線は、近代化にまい進する日本が陥っていた問題を指摘する。当時の西洋文化、あるいは時代の潮流を無批判に受け入れることから生まれるゆがみは、今も変わりがなく、人間の本質もまた然りだ。そういった意味でも、この作品は時代を超えて読み継がれていくであろう日本文学の名作だ。
カスタマーレビュー
三四郎
はかない恋心の妙でした。
読み終わった私は、stray sheep 。
どうしたらこんな余韻の残る恋愛小説を書けるのだろう。
三四郎が出会う個性的な人々が非常に魅力的に描かれていて、常に朗らかな気持ちで読んでいられた。
夏目漱石先生、さすがです。
すっきりした
学校で、一部しか扱ってくれなかったので、よくわからなかったが、流れがわかってすっきりしました^o^