「自然」という幻想
多自然ガーデニングによる新しい自然保護
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- ¥2,000
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発行者による作品情報
自然を「元来の姿」に戻そうとしてきた自然保護活動。 外来種を徹底的に駆除、手つかずの自然から人間を遠ざけ・・・・・・、人工物を撤去。 しかし、それで本当に、地球の自然が守れるのか? 著者は「手つかずの自然こそ至高、自然を元の姿に戻すべき」というこの価値観が、じつはアメリカでつくり出された「カルト」であり、科学的にも、費用対効果からも、実現不可能な幻想であると、世界各地の実例から示していく。 自然を「かくあるべし」と限定してきた過去の自然保護のあり方を批判し、自然をもっと多面的なものととらえ直して、多様な現実的目標設定の下で自然を創り出す「多自然ガーデニング」を提案する。
APPLE BOOKSのレビュー
気鋭の環境ライター、エマ・マリスが、自然への新たなビジョンを提案する「「自然」という幻想」。これまで多くの場合、自然を保護するというテーマの下では、"手つかず"の自然を保つという伝統的な価値が優位を保ってきた。しかし、その"手つかず"とは一体いつのことなのか。コロンブスのアメリカ大陸上陸以前、クック船長のハワイ上陸以前、はたまた1万3000年以上前のまだ人類が多くの生物に影響を与えることのなかった時代を指すのか。こうしたことに思いを巡らせることから本作は始まる。新たな生態系と旧生態系との間で繰り返される環境の変化は、自然保護というテーマに限らず、都市部における大規模な移住や、都市化に反応する文化の成立過程にも共通するという点を指摘しながら、せめぎあうエネルギッシュな攻防の中から作られる持続可能な形を探る。副題にある「多自然ガーデニング」という言葉こそ、本作が新たな可能性として提示するキーワードである。地球の温暖化に伴い、新しい生態系が形成される中、地球の合意を得る豊かな未来に向けてのビジョンの転換を問う。